ひとり鑑賞会

元来面倒くさがりである。

知人と出かけようという話になったところで、決めることが多すぎる。
日程、向かう場所、時間、互いの予定との擦り合わせ。
考えているうちに面倒臭くなってもう何も決めたくなくなる。
人間が複数人いるだけで予定が全く合わない。
二人ならまだしも、三人になるとたちまち、予定が合うのは1ヶ月後になる。

こんなことになるなら、明日一人で出かける方が早い。と、なり人を誘うことができなくなる。
結局人と出かけるというのは面倒なのである。

そんな私なのだから、旅行など行けるわけもなく。
いつも出かけるとなると前日あるいはその日に思いついて、出かけてみよう。
という勢いで出かけることになるのである。
その場合はもちろん一人で出かける。
前日や当日に出かけようと声をかけて、タイミングの合う奇特な知人などいない。
突然誘えるメンタルも持ち合わせていないのだが。

こんな時には音楽を聴きながら電車に長時間乗るだけで自分だけの鑑賞会をすることができる。
電車での移動の時間。景色を眺めながら聴きたかった音楽をきく、何もできないただただ音楽を聴く。
家にいると家族に声をかけられたり、荷物が届いたりと何かと邪魔が入るが、電車に乗っている間はそれはない。
流れゆく景色を眺めて音楽に浸る。
目的地はあるようなないような。切符を買ってあるのだから目的地はあるのだが、そこが目的ではなくなっていた。

降り立った地でものんびりを音楽を聴く。
そんな鑑賞の仕方があってもいいではないか。