熱情の泉

12月14日水曜日、今回の定期演奏会の曲が初めに渡されたのはこの日。

外には冷たい雨が降っていて、何とも暗い空色の日であった。
「メンデルスゾーン。」私はこれまでこの作曲家の曲たは幾度となく出会い、そして演奏をしてきた。ただいずれもそんなに演奏自体が記憶に残っていない。結局のところそれほどの思い入れもなかったのだ。

今回もまたこれまでと同じように、どこからか決められた曲のヴィオラというパート部分を、ある程度のレベルまで完成させるだけである。そこには何の熱もない、ただ楽譜に忠実に再現するだけである。

楽譜を渡された。この曲は「三大ヴァイオリン協奏曲」に数えられる、有名な作品ではあるがこれまで一からちゃんと聞いたことはないし、まして楽譜を見たこともない。まあでも、本番までは約3か月である。初めて楽器をもってからもう11年がたとうとしている私にとっては、それぐらいたやすいことだ。それよりか私が気になっているのは、メインではない3曲とアンコールの2曲である。

上層部の間では局は決まっているらしいが、まだ私のような末端の楽員のところまではその報せは降りてきていない。雲上の世界の、正直な話どうでもよい人間関係によって決定されるコンチェルトなんかよりも、そちらの方がわたしにとってはいくばくか重要なことである。前回はシュトラウスの「ドン・ファン」をやったし、その前はブラームスの1番だった。今回は何にされるのか?

もはや惰性で続けている、”擦れた”私にとって楽団の中の人間で完結するシンフォニーが何になるのかは、楽団ので唯一の楽しみである。